タイムスリップ水戸黄門
女子高生うららがタイムスリップに巻き込まれるシリーズの第4作。 今回は水戸黄門こと徳川光圀が、現代にタイムスリップするというもの。 道路をめぐる利権や自動車にまつわる環境破壊がテーマ?として出て、また 実際の徳川光圀と時代劇の水戸黄門の話をわざとごっちゃにしており 純粋にエンターテイメントとして楽しめる。 読み返すことは多分ないと思うが、1度楽しむにはいい。 ・ ねじのかいてん
住宅の解体で発生する廃木材からバイオエタノールを抽出して ガソリンに代わる燃料にする動きが産業ベースに乗りつつあるという ニュースや、京都市が家庭ごみからバイオマス発電に成功したという ニュースを見て、中学の頃読んだ椎名SFの初期短編集である本書に 収録されている「ゴミ」という短編を思い出した。 ・<廃木材>バイオ燃料として見直し 争奪戦も激化 ・家庭ごみから電力 京都市がバイオマス実験に成功 ストーリーとしては、近未来の東京でゴミが増えすぎて都市機能が 麻痺してしまい、政府が抜本的な対策として”ゴミ処理庁”を 発足させて大規模な補助金を出したことにより、リサイクルが 大幅に進んだだけのみならず、逆にゴミ不足の様相を呈するように なったというものである。 SFに現実が近づいていることを実感して、なかなか感慨深いものがある。 ・ 黄泉びと知らず
映画化された 『黄泉がえり』 のアナザーストーリーとして書き下ろされた表題作の他 8編からなるSF短編集。 表題作は黄泉がえり現象が起こることを願う元夫婦の物語で、子を思う親の切ない気持ちが 伝わってくる。このように叙情的な作品だけでなく不気味なもの、ユーモア一杯のものなど 多彩な作風を楽しむことが出来る。 一番良かったのは最後の「赤い花を飼う人」で、話の持って生き方は星新一に、途中からの 異様な展開は椎名誠のSFを思わせるものがあって面白かった。 ・ 地球人のお荷物
テディ・ベア(クマのぬいぐるみ)そっくりの異星人であるホーカ人と 地球人のアレックスが巻き起こすドタバタを描くユーモアSFの連作。 ホーカ人は物覚えが早く地球文化の飲み込みもいいが、それが過剰であり すぐに小説や映画の影響を受けすぎてしまう変わった異星人である。 おまけに酒が大好きなため、すぐに大騒ぎになってしまう。 アレックスは毎回騒ぎに巻き込まれてかんしゃくを起こすが、根が善良で 気のいいホーカ人たちのペースに巻き込まれ愛着すら湧いてくるようになる。 アメリカの西部劇にシャーロック・ホームズ、そして宇宙パトロール隊や 海賊などフィクションを過剰にマネすることによる短編が6篇で、 ホーカ人のトンチンカン振りにはなんどか大笑いさせられた。 ・ 黄泉がえり
数年前映画化された作品で、熊本を舞台とした叙情的なSF小説。 ある時点を境に、熊本の各地方にて死んだ人が死んだ頃の年齢の状態にて 帰ってくる現象が続発する。 当然死者がよみがえることは誰も想定していないため、行政や社会が 混乱するものの、基本的には遺族や恋人は喜びを持って迎えることになる。 しかし彼らには生前とはどことなく違い違和感があり、ある時点に何かが 起こることを次々に語り始める。それらはやがて現実のものとなることが 共通の認識となっていき、クライマックスに向けて話が進んでいくことに なる。 どうも映画では”泣けるホラー”などのコピーが出されていたようであるが、 ホラーというのとは違うと思う。 どちらかといえばある特殊な状況を作り上げる中での人間模様を描く叙情的な SFだと思う。 あっと驚くような展開を見せるわけではないが、一度死に別れた人との出会いや やがて訪れる別れを素直に感動できるいい作品だった。 ・ たたかう天気予報
笑いを狙った作品が多くを占めるSF短編集。 主人公と彼女がくだらなくも面白い会話を続ける表題作のほか、 『冷たい方程式』のパロディである「お茶の間”方程式”劇場」、 著者が編集者に追われる際の選択肢をゲームブック風に描いた 「火浦功、落ちる!」など、笑える作品が多い。 たまにそうでもない作品もあり、その中ではパラレルワールドで 描かれる恋愛ものの「不安定なまゆみ」が良かった。 ・ 親切がいっぱい
個性豊かな住人たちの住むアパートに異星人が漂着して、それに伴う ドタバタを描いたユーモアSF。 大抵のSFでは異星人がやってきた場合、戦争が起こる、とか 大混乱を引き起こす、といった展開になる場合が多いが、 結構住人たちは冷静に現実を受け止めてうまくやっていく。 裏のカバーにも書いてある通り、日常の強さをうまく描ききっていると思った。 ・ みるなの木
椎名誠の連作SFである『武装島田倉庫』の続編にあたるような 表題作の他、異常な世界を描いた短編集。 表題作や「赤腹のむし」、「海月狩り」には武装島田倉庫に 登場する百舌や灰汁が登場する。 他の短編はこれらとは舞台設定がやや異なるが、やはり謎の 生物や道具立てが登場するものが多い。 武装島田倉庫シリーズの他で好きな作品は、主人公が幽霊を 幽霊と認識するのに時間がかかってしまったため幽霊が 霊界に戻れなくなった悲喜劇を描く「幽霊」や、ホームレスたちが 公園に穴を掘って生活するようになる「巣」、主人公の妻が 徐々に樹と化していくいうシチュエーションを描いた「対岸の繁栄」 などである。 椎名SFは異常な世界構築と、その中で登場する人物、生物、機械など 奇妙な魅力があるところに特徴がある。 出歯出羽虫、管水母、余寒、呼び玉など架空の名称が面白い。 ・ 73光年の妖怪
先日読んだ DEATH NOTE から、サスペンス性の印象が本書を思い起こした。 私の好きな海外のSF作家ベスト4に入るフレドリック・ブラウンの長編で、 睡眠中の生物の意識を乗っ取るエイリアンが地球に漂着し科学者と 虚々実々の対決をするというストーリーである。 敵の姿がよく分からないという点、意外と近くにいる点などが特に近い印象で 面白い作品だった。 なお、上記ベスト4の他の3人は以下。 ・ロバート・A・ハインライン (好きな作品:『月は無慈悲な夜の女王』、『夏への扉』) ・アイザック・アシモフ (好きな作品:『ファウンデーション』、『火星人の方法』) ・ジェイムズ・P・ホーガン (好きな作品:『星を継ぐもの』、『断絶への航海』) ・ ヤミナベ・ポリスのミイラ男
好きな作家の1人である、梶尾真治のユーモア連作SF。 宇宙の平和を守る超人たちが集ったホテルで爆弾テロが発生して 超人たちの体がバラバラに。頭脳が残っていたのはバイトの 青年カズヒコのみだったため、それらをつなぎ合わせた形で 超人ミイラ男として蘇り活躍(?)するというもの。 随所で作者がつっこみをいれたり、脇役に登場する三流超人の キャプテン・パープル(イメージとしてはDr.スランプの スッパマン)や、悪の秘密結社”希望抜きのパンドラ”の 支部長であるオシリスの間抜けぶりが笑える。 アメリカのユーモアSFの場合、ときどき笑いのセンスが 理解できない場合があって戸惑うことがあるが、梶尾氏ほど 筆力のある作家の場合はためらうことなく大笑いできるので 良い意味で計算できるのがいい。 ・ 闇の中の系図
高校時代に読み、かなり衝撃を受けるほど面白かった小説。 嘘の天才である宏一は、嘘部という古代から歴史を操ってきた一族の 末裔であることを知らされ、その嘘構成能力を買われて大規模な 陰謀を成し遂げていくという物語。 著者である半村良の語り口が絶妙で、本当にそのような一族が あるのかもしれないと思わされてしまうほどだった。 半村作品には他にも『戦国自衛隊』『黄金伝説』など好きな作品が 多いが、この『闇の中の系図』が私の中でベスト作品である。 久々に少し読み返してみたが、基本的な構成は全く古びていなかった。 ふしぎな夢
星新一没後の作品集を再編した短編集とのこと。 裏に書かれた紹介の通り、ジュブナイルの『ブランコのむこうで』のような系統の 作品が多い。 いかにも星さんの作風といった感じの「新しい実験」「奇妙な機械」などもあるが、 本書ではショートショートよりも長めでジュブナイルに属する初期の作品が多く、 最初に読む作品としては向かないかもしれない。 (私の場合は『盗賊会社』で成功だったと思う) 結末で読者に考えさせる切れ味の鋭さには欠けるが、古典的なSFといった感じの 作品が多かったように思う。 この手の作品では「黒い光」が良かった。 ・ 題未定
作家が小説のタイトルを決められず、とりあえず題未定としたことから とんでもないドタバタに巻き込まれるSF小説。 宇宙人に会う、ワープする、タイムスリップするといった具合に SFの様々な要素をちりばめつつも、題未定という言葉が随所に出て 背景にタイトルを決めることに苦悩する作家の姿が垣間見えるようで 奇妙なおかしみのある作品だった。 小松左京は星新一や筒井康隆と並ぶ戦後日本を代表するSF作家で 3人とも好きだが、小松の特徴は地に足がついているというか 庶民の姿を的確に書けている点であるように思う。 何というか、苦労人であることが読み取れるところがある。 ・ 星空の二人
山岳小説も手がけるSF作家である谷甲州の作品を読んだことがなかったので、 最近出た本書を読んでみた。 内容はシリアスなものから叙情的なもの、ナンセンスまである短編集で、 表題作は外宇宙に人類が探査に出る時代のアバターを通した叙情的な 恋愛の話。ムードはあるが内容の深さにはやや物足りなさを感じた。 ナンセンスなものには「五十六億七千万年の二日酔い」や「スペース・ ストーカー」がある。前者は仏教の世界観からアキレスと亀、はては インフレやデフレの経済論まで出てくるハチャハチャな宇宙論?SFで 後者は新妻がスケールの大きなストーカーにつけまわされるという ナンセンスな作品。どちらもそれなりには面白かったが、あまり この作家にはこの手の作品は向いていないようにも感じた。 シリアスな作品にしても雰囲気的にはいい感じのものはあるものの 展開にやや軽さを感じていたのが残念だった。 アマゾン等でレビューを見たところ谷の有名な作品である航空宇宙軍史 シリーズは重厚な作品のようであるので、著者への評価は持ち越し。 本書の評価はいまいち! 悪魔の星
異星における文化の違いと、キリスト教的な神学をテーマとしている ハードSF。 爬虫類から進化した住民のいる惑星リチアで、地球から調査に赴いた 4人の科学者が植民するかどうかで激論を交わす。 中でも生物学者兼神父のラモンは、高度に理性的なリチア人に 神という概念のないことに苦悩する。 そして後半では地球で育ったリチア人が地球において騒動を巻き起こす。 キリスト教神父がラモンが主人公としてかなり理屈っぽい悩み方をするが 正直そのような絶対神を信じていない日本人の私としてはピンとこない ものがあった。 また、後半で出てくる地球育ちのリチア人であるエグトヴェルチが 群集をアジって暴動を起こさせるが、閉鎖的な地下核シェルター社会という 設定とはいえ、永井豪の「デビルマン」のような展開は安易な感じを受けた。 また、科学者の1人であるクリーヴァーはリチアを核兵器の貯蔵基地として 使用を企てるが、かなり勝手極まりない話であり、このような考え方を する連中が近世で植民地を作り搾取を行ったのかと思った。 とはいえ、1967年と割と古い作品である割には舞台設定がしっかりしており ヒューゴー賞作品であるだけのことはある。 まあ万人受けする作品とはいえないだろうが。
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