びっくり先進国ドイツ
元NHK特派員で、退職後フリージャーナリストとしてドイツに 16年以上在住している著者がどちらかといえば生活者としての視点から ドイツの社会やドイツ人の行動を描いた本。 一般的イメージとして、ドイツ人は規則に忠実で几帳面というイメージが あるが、実際に日本では道徳に委ねるようなことまで法律で強制したり その場の空気を気にせずに歯に衣着せぬ発言をしたりすることがあるようだ。 ただし、その反面休暇を愛し、会社では上から下までかなりの期間の 有休を消化しているという面もある。 思うに、日本では仕事中に休憩や息抜きをして緊張をほぐしていることや 日本神話では最高神に当たるアマテラスですら機織りをしているように 労働に対する考え方の違いがこの違いに影響しているのではないかと思う。 つまり、労働は嫌なものととらえ、さっさと終わらせようと緊張したまま 仕事をすることでストレスがたまるため、その反動として休暇への欲求に 表れるのではないだろうか。 他には会社では労働組合の力が強くて労働者の権利が他国に比べて保障されて いることや、個人主義の考え方が強いこと、社会保障が行き届いている反面 税金が高くて手取りが意外に少ないことなどが書かれている。 また、東西ドイツ統一後の東側受け入れの大変さや、直面している社会保障の 問題も出てきて、日本に通じる部分もある。西ドイツによる東ドイツの併合は 経済的に例えてみれば現在の日本が北朝鮮を平和的に併合するようなイメージ なのかも知れない。 ・ 誰も知らなかった賢い国カナダ
カナダ外交の専門家が、カナダの社会や政治について語った本。 米国と同じような国と思われがちであるが、米国のいいなりに なってばかりではなく言うべきことははっきり言う、それなりに しっかりした国のようだという感想である。 いくつかカナダの特徴を挙げると、このような感じ。 ・多文化主義で、様々な民族の風習に寛容 (米国のように、WASPの文化をそれほど強制しない) ・州政府の力が強く、州首相は教育や外交の一部など、他国の 州以上に色々な事を決めることが出来る。 ・財政赤字が問題だったが、予算を3年スパンで設定すること などで、黒字転換に成功した ・小選挙区制で死票が多いのが問題だが、連邦レベルと州レベルで 政党の勢力図が大きく異なり、けっこうドラスティックな 政権交代が起こったりする。 ・フランス語人口の多いケベック州は以前より独立要求が高く 頭の痛い問題だが、完全独立は当分ないと思われる。 ・外交では国連PKOに熱心で、米国のイラク戦争に反対した。 著者のさむいギャグにはつらいものがあるが、マスメディアでは知ることが 難しいカナダの実態を描いていて勉強になった。 ・ 海外投資はエストニアが面白い
エストニアの不動産投資で成功した企業家による、エストニアの 魅力を述べた本。 バルト三国の区別がつかないが、エストニアは旧東側の中では トップクラスで成長した国らしい。 また、自然豊かで人々も穏やかな性格と、住みやすい国という ことで、一度くらい行ってみたいと思った。 ただ、内容はそれほど深いものではない。 ・ イタリアーな日本人
日本とイタリアを比較し、その相違について論じた本。 表面的に見ると真面目な日本人と陽気なイタリア人ではあまり関係が なさそうだが、似た点として、 ・保守的な古い国である ・美的センスが優れている ・料理が素材を生かし他国からも評価が高い ・理由はともかく、他の欧米の人々からつきあいづらいと思われている ・冷戦体制下、保守的な政党の長期政権が続き、 ・役所は非効率なのに、なぜか経済はそれなりにうまくいっている などといった点を挙げていて、似ているのか似ていないのか微妙な 感じになってくる。 その上で両者はお互いに学ぶことができると主張していて、イタリア人は もっと日本と日本人を理解すべきであると述べている。 イタリア人が国内向けに書いたものであるため、記述に違和感があって うまく入り込めなかった。 ・ 大使が書いた日本人とユダヤ人
中学の頃読んだ『日本人とユダヤ人』には結構衝撃を受けた記憶が あるが、これは山本七平氏がユダヤ人名義で著したものと後になって 知った。確かに考えてみると日本の歴史や古典について知り過ぎている ように思った。 本書はイスラエル駐日大使のユダヤ人が書いたもので、内容に不自然な 点はないように思う。 著者は空手の達人という一面を持ち、空手や日本人たちとの交流を通じて 日本人とユダヤ人という、一見共通性のないような両民族が意外と似た ところがあるという点について言及している。 具体的には生活習慣の表面的な部分は違っているが、これは環境や周囲の 政治情勢によるところが多く、仲間に対する意識や誇りの持ち方などに 近い部分が見出せるようだ。 読んでいるうちに、日本人とユダヤ人は遠くて近い民族だと感じてきて、 では逆に日本人から見て近くて遠い民族はどこかと逆に考えてみると、 これはおそらく中国人にあたるだろうなと思った。 日本とイスラエルの祭りや習慣、軍隊の指揮の仕方など多くの例をあげてあり 分かりやすくて説得力があった。 ・ 日本神話とアンパンマン
古事記や風土記に代表される日本神話と、やなせたかし氏著作の漫画である 『それいけ!アンパンマン』を比較することから、日本の物語における パターンを論じている本。 高天原とパン工場、黄泉の国とバイキン星といった世界設定から、 スサノオノミコトとばいきんまんという勝者に対する敗者役、さらには スサノオノミコトとホラーマンというトリックスター役などの類型が 登場し、はっとさせられた。トリックスターというのは正義の味方側とも 敵役側ともつかず、コミカルで憎めないキャラクターで、ゲゲゲの鬼太郎で 言えばねずみ男、エリートヤンキー三郎で言えば河合星矢といったところになる。 また、古事記にしばしば登場する旅人の神と、ゲストとして登場するハンバーガー キッドやおむすびまんの共通性についても書かれ、なるほどとなる。 ある程度日本神話は知っていても、このような見方、さらには古事記型の 類型がいかに桃太郎や竹取物語のような民話、さらには漫画に影響を及ぼして いるかが感じられ一気に読み終えることが出来た。 ・ 貝と羊の中国人
貝と羊という古代からの象徴をキーとして中国人の精神構造や社会について 分析している本。 貝は中国古代の殷王朝で使用されていた貨幣であり、東方や農耕経済、ホンネと いったものを象徴している。それに対して羊は殷を倒した周王朝で主幹産業だった 牧畜のことで、理論やタテマエを表している。 中国人はその一見矛盾するような性質を双方共に具えており、現在共産党の 一党独裁政権が健在であるにもかかわらず資本主義経済を上手く取り入れて 経済発展していることに現れている。 他にも中国における英雄とヒーローの違い(典型的な英雄が劉秀、典型的なヒーローが 劉備)や、長らく特権階級として君臨し続けた士大夫階級の強さ、中華思想の 他国からの分かりにくさなど、中国社会の特徴を語っており、中国の歴史小説を 思い返して”なるほど”と思えるようなことも多かった。 どうも日本はその振る舞いの一つ一つが中国人の癇に障ることが多い反面 羨ましくも思っており、多くの摩擦になっているようだ。中国との関係は 本当に交流したことはあまりないと断言しているあたりは卓見だと思う。 文章も読みやすく、面白い本だった。 ・ 日本の常識を疑え!
日曜朝のフジテレビ系報道番組で”大体やねぇ〜”という口癖が印象的な 竹村健一による、タイトル通り海外での見方などを紹介して、広い視野を 持つことを勧めている本。 日本のマスコミや米国のニューヨークタイムズなどではブッシュ政権への 批判が強いが、実は米国中西部などではそうでもなくて、逆にブッシュ政権への 支持が高いことなど日本のメジャーなメディアであまり報道されないことが 書かれている。 テレビや新聞のみで情報を得ていると認識が偏向してしまう傾向があるので まあそれなりに評価するといったところ。 ・ 世界の宗教と戦争講座
『逆説の日本史』シリーズ等で知られる井沢元彦による 世界と日本の各宗教の教えと、宗教と戦争のかかわりについて 書かれた本。 日本的な和の世界から始まり、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、 仏教、神道、儒教と各章に続いていく。 井沢作品ではお馴染みの概念である、和の弊害や怨霊信仰そして 言霊信仰などが日本的な宗教概念として登場するのはやや食傷気味だが 他の宗教、中でも一神教に関しては改めて気付くところも多かった。 特に、欧米的な民主主義は絶対神に対しては人間なんて神に作られた ちりのような存在であるため大した違いはないというキリスト教的な 考えから生まれたとするのは何となく納得した。 逆に、親への孝行を第一義に考える儒教では上下関係がはっきりしていて 1人1票という欧米的な民主主義はそのままではなじまないようだ。 それぞれの宗教の考えの違いによる軋轢は日本人の想像を超えるもののようで 世界が平和にやっていくことは実に難しいと改めて感じた。 ・ アメリカもアジアも欧州に敵わない―「脱米入欧」のススメ
第二次大戦後の占領や冷戦後の「グローバル化」のため アメリカの影響が強くなっている日本だが、弊害も多いため 明治に学んだヨーロッパの良さを再認識したほうがいいと している本。 各国の政治や社会事情、歴史、そして文化や観光、食事に関しても 書かれているため、ヨーロッパに関心があればかなり実用的でもあり 面白いと思う。 一例として、西洋料理のイメージとしてライスをフォークの 背に乗せて食べることやスプーンやフォークを皿ごとに わけることがあるが、これらはヨーロッパ一般のものではなく イギリスのマナーということであった。 実はこのマナーは馬鹿馬鹿しいと思って実行したことはないが、 料理がまずいとされる国のマナーと知り、ますます実行する 必要はないと感じた。 明治時代の日本はヨーロッパ各国のいいとこ取りをしていたために おこっている現象ではあるが、それが独立国であるためにできた ことでもある。 ヨーロッパからは必要なものは全て学んだという論調が一部あるが、 明治以降にもヨーロッパだって良くも悪くも変化してきたわけで あるので、学ぶことや協力していくことは重要であると思う。 ややヨーロッパかぶれの傾向がなくもないが、知識としては豊富に 書かれているので役に立つ本だと感じた。 ・ 浮気人類進化論―きびしい社会といいかげんな社会
動物の中でも、人間が言葉を利用しているはなぜ?それは浮気をするにあたり 口説くため、そして言い訳や情報交換するために言語の能力が発達したのである −という論、そして動物のオス同士の生存競争を語っている本。 動物は同種では基本的に仲良く生活しているかのようなイメージがあるが、 例えば類人猿には群れのボスが交代した際、新ボスはメスを発情させるために 旧ボスの子を殺してしまうものがある。 また、メスの取り合いになった場合にメスのふりをしてメスに近づいたり 他のオスが持ってきたメスへのプレゼントを横取りする虫がいるなど かなりの激しい争いがなされている。 これらの動物の死亡率は人間という種の戦争や犯罪を含めた死亡率よりも はるかに多いというきびしい社会を構成している。 逆にチンパンジーのように乱婚的な社会もあり、環境やオスとメスの 力関係によりさまざまな生殖がなされている。 こうしてそれぞれの動物を見ていると、人間はオス同士の生存競争と いう意味では比較的穏やかな社会を形成していると言えるのかも しれない。 あるいは、それによる人口の増大を是正するために戦争を繰り返して きたのかも知れないというのは不謹慎な見方か? ・ ぐうたら学入門
勤勉で余裕のない現代人へのアンチテーゼとして、ぐうたらな者が幸せになる昔話から 過去の日本人の心象を語っている本。 三年寝太郎やわらしべ長者などで、ぐうたらだった桃太郎の幼少時代の裏話まで出て ぐうたらを認める価値を語っている。 その後徐々にぐうたらだけではなく自然との共生などへ話が及び、現代人の行動様式への ダメ出しを延々と続けていくのでかなり興ざめであった。 昔の農村をユートピア的に語っているのにはあきれてものが言えないという感想であり、 農村の閉鎖性や行司の面倒さも知っているものとしては もう少し客観的に述べて欲しいものである。 あまり面白くもなく、ためにもならなかった。 仏教・神道・儒教集中講座
不明確と見られがちな日本人の宗教観を構成する、表題の3つの宗教について それぞれ語っている本。 仏教と儒教については日本人が漠然と抱いているイメージと、それらが発生した インドや中国でのそれらの違いを述べていくことで、日本人がいかに外来の 宗教ひいては文化や文明を自らに合うように作り変えていくかということが 感じられる。 こうした点を著者はヒンズー教の戒律により牛をたべることができない インドではありえないビーフカレーに例えており、いいえて妙である。 そして神道とは何かということで、外来の宗教以外、あるいは外来の 宗教に影響を与えている部分であると説明している。 具体的には祖先や並外れた存在などに関して、正邪や内外を問わず すべてカミとして祭るという考え方である。 靖国神社問題でもそれは出ており、戦犯とされる人物も死後は カミでありホトケであるとする日本人に対して、中国の場合は 伍子胥が仇である楚の平王の死体を掘り出して鞭打ったように 激しい憎悪を持ち続ける。 中国でこのように激しい思想も取り込んでしまう日本人の 懐の深さには感じ入るものがあった。 破産しない国イタリア
イタリア人の生活の実態について、13章にて具体的な人物描写にて語っている本。 誘拐産業の隆盛、コネ社会、政府や公的機関のあまりのいい加減さなど、あきれすぎて 逆に半笑いしてしまうほどである。 とりあえず日本とはかなり異なった風土を持つ国であることが実感される。 政府はいい加減で公的サービスもお粗末、そして隙あらば税金をかけようとする。 それに対し国民は脱税にコネなどを駆使して対抗する・・・と中国にある言葉である 「上に法あれば下に対策あり」というのがこの国にも当てはまりそうである。 これほどでたらめ振りを繰り返す(と他国人には思える)割には、アルゼンチンのように デフォルトになることもなく続いていることに対しては、庶民のしぶとさ、したたかさを 感じてしまう。 でも中には日本と似ている部分もあって、それは年金問題である。 イタリアは年金生活者天国の面があり、1995年の法律改正前はうまくやれば 三十台半ばで年金を受給できてしまった。 当然これは国家財政に響き、現在の日本で問題になっている年金の未納問題など イタリアでは10年以上前に問題となっていて、ある意味年金問題については 日本の先を進んでいる国である。 今後イタリア政府の採る年金対策は、日本も参考になるのやらならないのやら・・・ ただ、四十歳前に楽隠居ができたのは日本の江戸時代なみで、怠け者の私としては かなり羨ましい。 進化する日本サッカー
2002年日韓ワールドカップの前頃に出版された、日本サッカー強化の歴史に ついて書かれた本。 以前はどうしようもなく日本サッカーは弱かったようだが、この事情に対し 底辺を広げて育成を行っていくという強化策で日本サッカーのレベルアップを 図ってきた経緯が書かれており、短期間では決してサッカーは強くならないことを 感じた。 中国や北朝鮮では選んだ選手に長期合宿や強化を行うやり方で日本に勝とうと しているようだが、一時的な効果はあってもその選手たちだけで効果が終わって しまうので長い目で見るとあまり有効に機能しない。 日本が強くなったのにも、かなりの努力がなされたということに素直に感動した。
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